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年収の壁 制度改正に係る助成金

年収の壁 制度改正に係る助成金


記事作成日:2023/11/30

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パートやアルバイトなどで働いている社会保険の被扶養者が一定以上の収入になった場合には、被保険者の扶養から外れることになります。
扶養から外れると健康保険料や厚生年金保険料の社会保険料を支払わなければならなくなり、被扶養者だった時よりも手取りの収入が減るケースが考えられます。
この社会保険料負担による手取り収入の減少を避けるため、就業調整をするパートやアルバイトなどの方が多くいるのが現状です。
この社会保険料を支払わなければならなくなる収入基準のことを年収の壁といい、「106万円の壁」、「130万円の壁」などと呼ばれています。
生産年齢人口が減少しているために労働力確保が必要となっている昨今では、この年収の壁問題が大きな課題になっています。
この課題を取り除きパートやアルバイトなどの方が年収の壁を意識することなく働けるために、2023年10月より「年収の壁・支援強化パッケージ」が開始されました。
今回は、この「年収の壁・支援強化パッケージ」による助成金について詳しく解説していきます。

1.106万円の壁と130万円の壁

106万円の壁と130万円の壁などの年収の壁とは、扶養から外れて社会保険料などの負担が発生する一定の収入基準のことです。
106万円の壁と130万円の壁の違いは、以下になります。

(1)106万円の壁

厚生年金保険の適用対象者数(被保険者数)が100人超の企業に週20時間以上で勤務する場合、月額8.8万円以上(年収約106万円)が社会保険に加入する収入基準です。

(2)130万円の壁

上記(1)以外の社会保険の被扶養者の場合は、年収130万円以上が社会保険の扶養から外れる収入基準です。

2.年収の壁・支援強化パッケージ

年収の壁・支援強化パッケージとは、パートやアルバイトなどの方が、年収の壁を意識せず働ける環境づくりを支援するための厚生労働省による施策です。
106万円の壁と130万円の壁に対する年収の壁・支援強化パッケージは、以下の施策になります。

(1)106万円の壁に対する施策

106万円の壁に対する施策は、以下になります。

①キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」の新設
パートやアルバイトなどの方が新たに社会保険の適用者になった場合の助成金として、キャリアアップ助成金「社会保険適用時処遇改善コース」が新設されました。
その内容は、社会保険の加入により負担しなければならない社会保険料額を、手当の支給や賃上げなどによるによって手取り収入を減らさない取り組みをした企業に対して、労働者1人当たり最大50万円の支援をするものです。
社会保険適用時処遇改善コースには、「手当等支給メニュー」、「労働時間延⾧メニュー」、「併用メニュー」の3種類が設けられています。

・手当等支給メニュー
手当等支給メニューは、パートやアルバイトなどの方が新たに社会保険の適用者になった場合に、「社会保険適用促進手当」の支給などによって従業員の収入を増加させる場合に事業主に対して助成するメニューです。
1年目、2年目は、賃金(標準報酬月額、標準賞与額)の15%以上分を労働者に追加支給した場合に、1人あたり中小企業で20万円(大企業の場合は中小企業の3/4)が支給されます。
3年目は、賃金(基本給等)の18%以上を増額させた場合に、1人あたり中小企業で10万円(大企業の場合は中小企業の3/4)が支給されます。 
また、2年目に前倒して3年目の賃金の増額の取組を実施する場合には、2年目の1回目の支給申請でまとめて30万円が支給されます。

・労働時間延長メニュー
労働時間延長メニューは、所定労働時間の延長により社会保険を適用させる場合に事業主に対して助成するメニューです。
以下の週所定労働時間の延長と賃金の増額を組み合わせる場合、従業員1人あたり中小企業で30万円(大企業の場合は中小企業の3/4)が支給されます。

週所定労働時間の延⾧が4時間以上 賃金の増額:要件なし
週所定労働時間の延⾧が3時間以上4時間未満 賃金の増額:5%以上
週所定労働時間の延⾧が2時間以上3時間未満 賃金の増額:10%以上
週所定労働時間の延⾧が1時間以上2時間未満 賃金の増額:15%以上

・併用メニュー
併用メニューとは、1年目に手当等支給メニューの1年目の取組により従業員1人あたり中小企業で20万円(大企業の場合は中小企業の3/4)の支給を受けます。
そして、2年目に労働時間延長メニューの取組により、従業員1人あたり中小企業で30万円(大企業の場合は中小企業の3/4)の支給を受けることです。

②社会保険適用促進手当
社会保険適用促進手当とは、パートやアルバイトなどの方が社会保険の適用を促進するために、事業主が従業員の社会保険料負担を軽減するために支給する手当のことです。
社会保険適用促進手当は、給与や賞与とは別に支給され、本人負担分の社会保険料相当額を上限として、保険料算定の基礎となる標準報酬月額や標準賞与額の算定対象にならないとされています。
ただし、算定対象にならないのは、最大2年間の措置です。

(2)パートやアルバイトなどの短時間労働者

社会保険の適用事業所に勤務するパートやアルバイトなどの短時間労働者は、以下の条件を満たした場合には社会保険の被保険者になります。

ア.1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が、同じ事業所の同様の業務に従事している常用雇用者の4分の3以上であること

イ.社会保険の特定適用事業所などに勤務していて1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が常用雇用者の4分の3未満の場合は、以下のすべての条件を満たすこと

・週の所定労働時間が20時間以上であること
・賃金の月額が88,000円以上であること
・雇用期間が2か月を超えて見込まれること
・学生でないこと

特定適用事業所とは、1年のうち6か月以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が101人以上であることが見込まれる事業所のことです。
また、賃金の月額が88,000円以上は、年収に直すと約106万円です。

まとめ

このように、労働契約を締結する場合、一定の事項について労働者に対して労働条件を明示しなければなりません。
また、明示した労働条件と実際の労働条件が異なる場合は、 労働者は即時に労働契約を解除することができると労働基準法に定義されています。
この定義に違反した場合には、30万円以下の罰金に処される可能性がありますので注意が必要です。
労働者を雇用に関しての労働契約などについては、いろいろと悩まれることも多いかと思います。
労働契約などに悩まれることがありましたら、是非当事務所にご相談ください。

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